おもちゃの王様といえば、やはり木製の積み木。けれどもこの積み木の起源は意外と浅い。積み木の原型は、1840年世界初の幼稚園を創設したフリードリッヒ・W・フレーベルが考案した「恩物=Spile-Gabe」と言われている。その恩物は1辺2.5cmを基尺とした立方体が基本で、子どもたちが遊びながら形や大きさ、数などについて学べる工夫が施されていた。
当時のヨーロッパは産業革命以降、様々な産業が興って急激な都市化が進んでいた。そんな中で子どもの生活や教育の在り方も大きく変化していたのだ。現在でもデュシマ社をはじめとして多くのメーカーが、フレーベルの理論による積み木やおもちゃを生産している。
フレーベルが恩物を考案していた頃、まったく違った発想によるブロックおもちゃが誕生した。ライト兄弟にも影響を与えたドイツ航空工学界のパイオニア、リリエンタール兄弟が、欧州の石造建築をリアルに再現したいと考えたのだ。2人は石灰、亜麻仁油などを使い、本物のレンガのような積木を完成させた。ところが兄弟は、根っからの技術者であったため営業面で失敗し、1880年に製造技術を事業家フリードリヒ・A・リヒターに売却した。
以降「アンカー石積木」として世界中で成功を納め、物理学者のアインシュタイン、バウハウスのグロピウス、クリントン前アメリカ大統領もこれで遊んだという。実際、ここ80年でおよそ50億個のパーツが売れている。
科学の進歩が子どものおもちゃにも大きな影響を与えているという話。
写真はアトリエニキティキWEBより
関 康子
デザインエディター、トライプラス代表 デザイン誌『AXIS』編集長を経て、フリーランスのエディターとして活動。2001年にはトライプラスを共同設立し、「good design for children」を目標に、子どもの「遊び、学び、デザイ ン」のための商品開発、展覧会・出版企画・編集にもあたる。2011年、「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」展(2121DESIGN SIGHT)で、ディレクターを務める。女子美術大学非常勤講師。 著書に『世界のおもちゃ100選』(中央公論新社)、AERA DESIGN『ニッポンのデザイナー100人』『ニッポンをデザインした巨匠たち』(共著、朝日新聞社)、『超感性経営』(編著、ラトルズ)、「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」(編著)など。